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那須連山 朝日岳遭難事故各メディアより拾い

(1)遭難概要
 2023年10月6日、那須連峰の朝日岳(1896m)の稜線で60代の2人組男性パーティのうち1人が悪天候により行動不能となった。1人が救助を求めて、携帯の通じる場所まで移動し12時20分ごろ警察に連絡した。途中男女3人のパーティが倒れていた。声をかけたが返事はなかった。この3人パーティについては、別の登山者も遭遇し12時39分に警察に一報を入れていた。警察は、14時40分頃に峰の茶屋まで上がったが強風のため動けず、17時に捜索を断念した。翌朝救助に向かい7時15分に遺体を発見し、4人とも低体温症で死亡を確認した。
(新聞、TV等のメディアより抜き書き)

(2)通報した2人組パーティの男性の話
 10月5日に入山し三斗小屋温泉に宿泊し、翌朝小屋を出た。午前11時頃から天候が急変し、強風が吹き荒れ、雨や風で飛ばされた小石が舞う中、岩につかまりながら四つん這いになって行動していた。朝日岳手前の稜線近くで1人が低体温症で動けなくなった。
(新聞、TV等のメディアより抜き書き)

(3)三斗小屋温泉 「煙草屋旅館」オーナー野本さんの話
 2人組パーティは、「大峠」方面に行くと言っていた。強風の予報が出ていたので、やめた方がいいと忠告し、ルート変更を進めた。別の3パーティは助言を受けて別ルートに変更して下山した。「あの時無理にでもルート変更をしてあげたらよかったかも。」(下野新聞)

(4)当日の天気図
 『発達した低気圧に伴って、北日本は雨や風が強まり大荒れの天気。えりも岬で最大風速37.5メートルなど、台風なみの暴風。東日本や西日本は晴れた所が多く、最低気温はこの秋これまでで一番低くなった。長野県の野辺山は、氷点下0度2分で今季全国初の冬日。』
2023年10月6日6時の天気図(日本気象協会実況天気図より)

宇都宮地方気象台の予報:6日は西高東低の「冬型」の気圧配置となり、北日本や東日本を中心に強い風が吹くと予想。那須町を含む栃木県北部には、6日午前6時過ぎまでに強風注意報が出ていた。同町の6日正午の気温は12.9度(gooニュース)

(5)那須岳ロープウエーの話
 山頂駅(標高約1690m)では、最高気温6.5度、最低気温4.5度、風速20m。6日の朝、強風で登山を断念しロープウエー山頂駅から引き返す客が相次いでいた。午後からは、下りのみ運転し15時には運転を中止した。

(6)栃木県山岳・スポーツクライミング連盟の遭難対策委員長増淵氏の話
 7日の捜索に加わったが、冬用の登山服の上下を着こまないと寒さをしのげないぐらいだった。6日は、風速20m~30mぐらいあったのではないか。(読売新聞)

(7)栃木県山岳・スポーツクライミング連盟の植木孝指導委員長の話
 6日昼過ぎ、「同行者が動けなくなった」と相次いで警察に救助要請があった。警察や消防が救助に向かったが、風速40メートルに迫る強風と氷点下の気温に阻まれ、登山者までたどりつくことができなかった。遭難者のリュックサックは夏のハイキングを思わせる小さなものだった。おそらく雨具はあっても防寒具は持っていなかったのではないか。「でも、装備よりも問題なのは天候の判断ミスです。天気予報を見れば、冬型が強まって山では雪混じりの強い北西風が吹くことは容易にわかったはずです。登山を2日後に延期すれば、楽しい山登りになったはずなのに……」(gooニュース)

(8)山岳医療救助機構の大城和恵医学博士の話
 低体温症が恐ろしいのは、本人が低体温症になって危機的状況に陥っていることに気づかないことだ。単独行で低体温症になっても本人が気つかず、救助を求めることなく意識が低下して亡くなってしまう。 大城さんの調査によると、2011〜15年の間に起きた山岳遭難で、81人が低体温症で亡くなった。ところが、このうち、本人が救助を求めたのはたった1件しかない。ほかは同行者や、動けなくなった人を見つけた登山者による通報。もしくは、家族からの捜索願だった。「低体温症になると、脳の温度が下がって判断力が失われます。助かった人の話を聞くと、『何かをすることが面倒になって、どうでもよくなった』と言う」(プレジデント)

(9)羽根田治氏の話
 那須連峰は標高約2000メートルの山々が連なる中級山岳だが、地形的に北西の風が吹き抜けやすく、とくに冬場は“強風の山”としてもよく知られている。平地と同じ感覚で山を訪れると、予想外の寒さに登山を楽しむどころではなくなってしまう。ましてひとたび天気が崩れれば、山は厳冬期なみの大荒れの状況となる。そんななかで起きたのが今回の事故だった。標高の高い秋の山では秋と冬が瞬時に入れ替わり、登山には周到な準備と適切な判断が要求される。それを誤ってしまったことによる大きな遭難事故は過去に何度も起きている。
(プレジデント)

(9)拾い読みを読んで、あなたはどう思いますか。
 男性2人パーティは、三斗小屋温泉を出た後、大峠、大峠分岐、三本槍岳、朝日岳のルートをたどり、1人が朝日岳の肩手前で動けなくなった。男女3人パーティは、ロープウエー山麓駅の上にある県営駐車場から登山道を登り稜線まででて、峰の茶屋跡から数百メートル朝日岳の肩に向ったところで倒れていた。
 報道によると防寒具は来ていた。救助隊の話によると、それほど重装備には見られなかったという。防寒対策ができていたかは疑問。気候が急変し冬型の気圧配置になると山では零下以下になるので注意が必要。(ロープウエー山頂駅(1690m)付近で、4度前後、100m上の稜線(1800m)では、3度前後、20m~30mの雨・風が吹けばマイナス15度前後)。宿泊先のオーナーより、やめるよう勧めがあった。ロープウエー山頂駅から強風注意のお知らせもあった。気象庁より強風注意報が出ていた。両パーティとも、途中何度も、引き返すことも考えたはずですが、前に進んで低体温症で亡くなりました。男性2人パーティの1人と通りかかって警察に通報した人の2人は無事生還しています。亡くなった人と、生還した人との差は、なんだったのでしょうか。いずれ詳しい状況もわかるかもしれません。その時を待ちたいと思います。

この状況でさあ、あなたならどうしますか。頑張って登りますか、
それとも下山しますか。生死を決めるのはあなたです。

(インターネットより各メディアのニュースを抜き書きしました。) 國司 記

                          

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